デジタル広告運用、アウトソースか、インハウスか。

飛行機を操縦

デジタル広告の運用、特にアドテクノロジーが進化してきた2010年以降、広告主サイドではインハウス運用が流行り、トレンドに乗ってインハウス化した企業も増えた。
純広告ならば広告代理店がメディアプランを組み、メディアレップなどを通して購買、出稿を行っていたが、出稿までの中間の流通業務が簡素化され、誰でも少額から出稿自体は可能となり、大きく変化をしていった。
今でもインハウス化の検討を行っている企業は多いが、結局のところ、やってみないとわからない部分も多くあり、インハウスに踏み切らない、踏み切れない企業も多い。
改めて、メリット・デメリットを整理すると、どちらが良いどちらが悪いと極論になりがちだが、単純な解はなく、届けるサービス、マーケティング組織のフェーズで変わってくる。さらには業界の特性も関わってくる。

最終的にはハウスエージェンシーが行き着くところに感じるが、そこまでできる企業は少なく、収益性や事業ポートフォリオなど課題は多く、実現性も低い。

改めてポイントを洗い出し、判断する上での参考になれば。

メリット

  • 中間マージンの削減
    単純に代理店に支払うマージンが削減されるので、出向費用が軽減される。
    一般的にはネット金額に対して20%程度で、グロス金額の内訳ではさらに比率的に下がるが、出稿金額が大きくても小さくても、サービスの売上金額次第では無視できない金額となる。
  • ノウハウ、ナレッジの蓄積
    効果検証などを自社で行うため、PDCAサイクルを回して施策を行った場合のノウハウ、ナレッジを自社に蓄積し易い。
  • サービス、目的を理解した出稿
    広告代理店とは人と人とのコミュニケーションで認識齟齬も起こりやすい。自社での出稿ならば、サービスの理解度、出稿目的の理解度も高く、ズレのない出稿を行える。
  • スピード感を持った出稿
    広告代理店に依頼をする場合は、営業→スタッフなど人を介して調整を行うため、タイムラグを生みやすいが、自社での出稿の場合、担当がそのタイミングで調整するため、スピード感を持って出稿が可能。

デメリット

  • リソース、人件費の圧迫
    結局の広告代理店側で行っていた業務を自社で行うため、リソースは必要で、別途担当を立てれば、その分人件費など費用が必要となる。
    削減されるマージンとの差し引いてもどちらがコストが低いかを考える必要がある。
  • 属人化と運用レベル
    社内でのノウハウなどの共有はしやすいが、担当メニューによって高いレベルを求めると属人化し、ほかが担当できないレベルとなり、単純な業務引き継ぎは行えず、レベルの安定化も難しくなる。特に定着も難しい職種のため、属人化した場合、担当引き継ぎで一度リセットされてしまう。
    ノウハウ自体も消費期限は早い時代のため、その点は注意が必要。
  • サポート
    自社で運用していると質問できる環境もなく、サポートは媒体頼みになりやすい。出稿金額が少額の場合は、媒体側に担当もいなく、結局自分で調べて自力で解決する必要も出てくる。
  • 情報遮断
    情報は一旦多く入ってきたほうが良いが、自社内だけで運用していると、最新情報などが入りづらい。近年はネット上で情報が多く流れているため、そこまで懸念する必要もないが、広告代理店の持っている最新情報が入りづらいことは確か。

判断軸

  • サービスのフェーズ
    出稿するサービスがどのフェーズにあるかはポイントで、新規サービスとしてスモールスタートする場合は、予算も限られフィジビリティスタディも兼ねているためインハウスでの実施が良いが、規模が大きくなればなるほど、売上影響や属人化リスクもあるため、リスクヘッジも兼ねて一部はアウトソースなど検討も必要となる。
  • 組織の状態
    マーケティング組織として対応できるリソースがあるかないかもポイントとなる。デジタルマーケティング人材は限られており、少しでもデジタル広告に明るい人がいればよいが、素人集団でのインハウス運用は結果も悪く、そもそも良いか悪いかの判断もできない可能性もあるので、出稿規模に対して対応できる状態かの見極めは必要となる。
  • 求められるレベル
    デジタル広告を出稿する、だけなら独学で可能だが、そこからのオプティマイズやスケールをどこまで求めるか、事業としての重要性次第では、前述の通りデジタルマーケティング人材は限られるため、求めるものが高くなればなるほど、インハウスでの実現性は低くなっていく。
  • 出稿プラン
    出稿予算の規模はどの程度か、少額出稿の場合はメニューも限られ、チューニング頻度も低いため、インハウスでの出稿が可能となるが、運用メニュー数や出稿金額が大きくなればなるほど、自社で運用することは難易度が高くなる。
  • 業界の特性
    サービスや目的がアクイジション、パフォーマンス、ダイレクトレスポンスの場合は、日々の運用工数が大きかったり、売上へ直結するため短期的な重要性が高くなるが、いわゆるリーチ最大化、来訪など、浅いコンバージョンポイントの場合は、短期的な効果よりも中長期的な目的がおおくなるため、よりアナリティクス、分析能力、効果可視化が求められ、運用業務ではない部分が重要で、運用自体は自社でも実現性が高い。これは業界によって変わってくる。

にほんブログ村 経営ブログ 広告・マーケティングへ